アスリートの栄養指導・栄養教育の実際(後編)

アスリートの栄養指導・栄養教育の実際(後編)

栄養教育・食事指導の実際

栄養教育・食事指導の実際

食事調査等による実態把握

食事指導を実施する前(介入前)に食事調査を実施して現状を把握し、指導後一定期間経過した後(介入後)に再び行い、栄養摂取状況などに改善がみられたかどうかを評価しましょう。

少なくとも年に数回の食事調査を行い、状況と目標の確認をしていくことが望ましいです。

また、食品摂取頻度調査法(FFQ)を用いれば5~10分程度の記入で栄養摂取状況の傾向について把握することが可能になります。

さらに、食習慣チェックなどのアンケート法など簡単に栄養摂取状況をのスクリーニングができる方法もあり、各自の状況を選手自身を認識させ、選手自身が日々の食事の見直しと修正をしていくための動機づけとしていきます。

 

栄養セミナーやグループ指導開催

一度に多数の選手に対して行う集団・グループ指導には、セミナー、講習会、グループディスカッション、実習などがあります。

参加する選手の知識や理解度、関心の示し方には個人差があるため、この方法では一人ひとりのニーズにあったきめ細やかな指導は難しいです。

しかし、共通の問題や関心を持っている集団であるため、互いに刺激しあったり励ましあうなど、相互に啓発されることにより個別指導ではみられない効果も期待できます。

特に初めてスポーツ栄養の話しを聞くというような場合には、最初の動機づけとしては有効な手段であります。

セミナーやグループ指導を開催する場合、テーマを明確にしたほうが理解度を高めることができます。

スポーツ栄養セミナーのテーマ例としては、ウエイトコントロールの方法、筋力アップの食事法、貧血予防・改善の食事、試合前の食事法、通常練習期における基本的な食事の組み合わせ方、スタミナをつける食事法、合宿・遠征時の食事、海外遠征時の食事の注意点とコンディショニングなどがあります。

このように毎回テーマを選んで定期的または随時に行うと効果的です。

スポーツ栄養の教育、指導で使われている主な媒体は、ポスター、写真、フードモデル、料理カード、パンフレット、出版・刊行物、コンピュータによる出力表、スライド、OHP、テレビ、ビデオなどであり、それぞれ多人数向け、個人向けといった特徴があります。

これらの使用により、印象を深めたり、理解しやすくなったりします。

指導の目的や内容、選手の特性と人数、使用する会場の環境、経費などを考慮して選択しましょう。

 

食品と食事の組み立て方に関する基礎知識と習慣

指導の中では、栄養素とその働き、栄養素とスポーツのかかわりなどの基礎的な知識と認識を持たせる必要があります。

選手が各栄養素を多く含む食品について知り、1日に何をどれだけ食べたら良いのか(エネルギー別食品構成)を理解し、3食と間食、補食を1日の中でどのように配分するかなどを具体的な食事調整法を身に着け、さらには昼食(コンビニ、学食、外食)や遠征時などに自分で適切な食事が選択できるように導いていきましょう。

 

個別指導、個別調整

減量、貧血、故障時などには、個別のきめ細やかな指導と食事調整が必要になります。

食事調整を実施するのは他ならぬ選手自身であるため、選手のモチベーションを維持させることが大切になってきます。

そのために、ときどき面接を行い目標や意思を確認したり、練習日誌とともに食事日誌をつけさせたり、メールや手紙などを活用して面接では言いにくかった疑問点や悩みを聞くなど、選手の個性と性格、状況等に合わせてサポートしていきましょう。

 

献立の改善

選手が寮や合宿所において食生活をともにしている場合、チームにおける栄養改善を効果的に行うには、寮や合宿所の献立メニューを望ましいものへと改善する費用があります。

まず寮、合宿所のメニューの栄養バランスを調査し、メニューの改善を試みる。食材料費の予算があまりに安価な場合はチームの経理部門とも相談して、金銭的な問題解決を図るようにしましょう。

栄養教育、食事指導は、献立作成や調理担当者に対しても行われるとより効率的です。

自宅で生活している場合は、調理担当者に対しても栄養教育を実施し、同様に献立改善の方法についての指導を行いましょう。

 

食事の取り方実習や調理実習

国内・海外遠征時のホテルや選手村のレストランでは、バイキング形式で食事が提供される場合が多いです。また、学生食堂や社員食堂、コンビニエンスストア、ファミリーレストランなど外食の機会が増えているため、選手は正しい食事、食品の選択方法についても知識を養い技術を身につけておく必要があります。

そこで、合宿時や遠征への出発前に食事選択実習を行うことが良いです。

バイキング形式で提供される料理の中から、試合前夜の夕食、当日の朝食というふうにテーマを設定し、栄養のコンサルテーションなしに選手に選ばせて、バランスチェックと指導を行うといいでしょう。

市販の料理カードを用いて同様の実習を行うこともできます。

また日常生活では、特に一人暮らしや選手が食事作りを行う合宿所の場合、楽しく調理実習を行い、比較的簡単にできて栄養価の高いメニューの紹介や調理のコツを学ぶ機会を作れれば、食事改善効果も高くなります。

それには、管理栄養士等の協力が不可欠になってきます。

 

 

スポーツ栄養士との連携

スポーツ栄養士との連携

スポーツ栄養士とはアスリートをサポートするために必要なさまざまな知識と技術を身につけた管理栄養士です。

具体的には、スポーツ栄養士には選手の栄養状態をアセスメント(評価)するアセスメントスキル、栄養教育のためのプレゼンテーションスキル、選手・指導者やスポーツドクター・アスレチックトレーナー・各方面の研究者と情報交換しながら業務を行うコミニュケーションスキル、日常及び合宿・遠征・競技中などにおける食事管理や環境整備などをスムーズに行うためのマネジメントスキルといった、多くのスキルが求められます。

アスリートを対象に栄養サポートを実施している管理栄養士、栄養士は「スポーツ栄養士」と呼ばれます。

しかしながら、現在(2018年現在)のところ正式な資格ではなく、日本スポーツ栄養研究会が日本栄養士会と連携しながら、スポーツ栄養士養成のためのカリキュラムについて検討中です。

指導者・アスレチックトレーナー等はこのようなスキルを持つ管理栄養士と密接に連携しながら選手のコンディショニングを行う必要があります。

それぞれの視点でみた選手のコンディションや状況について、互いに報告しあいながら、それぞれの選手あるいはチームの問題点にどのようにアプローチしたらよいか、解決の糸口について相談しなければいけません。

けがや故障がある場合、ウエイトコントロールが必要な場合などには食事調整が不可欠になります。

食事調整方法についても、同じ方針で選手にアプローチし、選手が混乱を起こすことがないように努力していきましょう。